戻る

シリーズ「アスリート的マインドセット」その1: 目標

「アスリートの真髄は精神力」。On ZAP Enduranceチームのメンバーは口々にそう唱えます。最高のパフォーマンスを求めて筋肉を鍛えるように、マインドセットを研ぎ澄ませるためにはどうすれば良いのでしょう?エリートランナーがそろうZAPチームのメンバーが教えてくれた秘訣をまとめました。

 

強靭な精神力が、パフォーマンスすべてを司る大切な礎だというのは周知の事実。そこで今回は、精神面の構成要素別に深く掘り下げ、その強化方法を探っていきたいと考えました。話を聞いたのは、エリートマラソンランナーが集まるOnの ZAP Enduranceチームです。

 

最も強靭な精神力を求められるマラソンという競技で、常に上位を維持するために必要な、役立つヒントをたくさん教えてくれました。

 

全3回でお届けするシリーズ「アスリート的マインドセット」では、困難に打ち勝つ力、競争心など、エリートアスリート的マインドセットの真髄となる3つの要素を紐解いていきます。今回のテーマは目標です。 

 

アスリート的マインドセットとは何か? 


On のZAPアスリートたちの精神力を語るにおいて、まずはZAPチームが目指す方向性や目標との関係、精神力が高まるとどうなるのか、そもそもアスリート的マインドセットとは何なのか、について知っておきましょう。

 

「アスリート的マインドセットとは、何かに突き動かされつつも、リラックスした柔軟な心を持っている状態だと思います」と話すのは、ニコール・ディメルキュリオ選手(2018年ボストンマラソン6位)です。 

 

常に目指すべき目標がある彼らにとって、何かに突き動かされることは重要です。ただ、リラックスした心を持つこともそれと同じくらい大切です。人生は予測のつかないものであり、時として目標を達成できないこともあります。心の柔軟さは(最終目標を達成する能力に欠けている場合であっても)達成できる範囲内の目標に集中して全力を傾けるときに役立ちます。 

    

ZAPチームでマインドセットについて話し合うときに「明確な目標を決めてそれにフォーカスすること」が頻繁に話題に上ります。事実、彼らは精神力の基盤を自ら作り上げるのです。タイラー・ペネル選手(全米マラソン選手権前回チャンピオン)は、勝っても負けても、目標こそがマインドセットを決めると言います。 

 

「頭の中に具体的な目標があり、その目的を達成するためにあらゆる努力ができる人を『アスリート的マインドセット』と持つ人だと言えるでしょう」(ぺネル選手)

 

「そういう人は、いつもよりも早く来てフリースロー練習を何百回も行ったり、一日しっかりと休んで身体の回復を図ったり、自らの意思でプラスの努力を続けます」

     

 

「結果には多くの異なる要素が影響を与えるため、『アスリート的マインドセット』を持つ人が常に目標を達成するかと言えば、そうでもありません。しかし、彼らは能力の限界まで力を出し切ったという思いがあるため、どんな結果でも受け入れられるのです」 

 

一歩一歩前進する


複数のメンバーが認めるのは、大変な日々もしっかりとやり遂げるかどうかが、良い成績か素晴らしい成績になるかを分ける境目になるということ。そしてここでも大切なるのが、明確な目標を設定することです。大きな目標を一つ掲げるだけでは、モチベーションが低いときにくじけてしまいがち。ポイントは、その大きな目標へと向かう、達成可能な小さい目標を少しずつ設定することです。 

 

ジョー・スティリン選手(フルマラソンPB・2時間13分)はこう説明します。「小さな目標を設定すると、大きな目標に向けて進む過程で心地よい自己効力感がもたらされます。週または日々の目標を達成することで自信が高まり、トレーニングに対する意欲が低下しづらくなります。長期間に渡る努力が必要とされるマラソン選手の場合、活発な環境を維持することと、達成すべきタスクを段階ごとに分けて行うことが必須です」

 

ZAPチームに加わった最新メンバーのトリスティン・ヴァン・オルド選手も、これに従って目標設定を行っています。 

 

「段階に分けて目標を設定しています」と話すヴァン・オルド選手は、「オリンピックに出るという目標を持つことも大切ですが、その前に達成する小さな目標の数々が最大の目標へと導いてくれます。毎朝、『確固たる意志と情熱を持ってベッドから起きる』という目標を持たない自分が、最高レベルの競技会でどうやって戦えるというのでしょう?最終目標に向けて小さな目標を設定すると、自分をコントロールする助けにもなります」

    

 

目標を小分けに


On ZAPチームのピート・レア監督は、選手たちの目標を常に見ながらトレーニングを進めていきます。レア監督は一つの目標を要素別に分ける場合にはさらに一歩深く踏み込むこと、また最高のパフォーマンスを期待するのが現実的でないときには実現可能な範囲で目標を小分けにして、納得しながら前に進むことを提案します。勝つための努力をしている限りは何の問題もないのです。

 

「A、B、Cと、階層にわけて設定することが一番良い方法だと確信しています」 と、レア監督。 「完璧な一日を過ごしていれば、目標Aが達成可能です。目標Bを達成する日は良い日かもしれないし、目標Cしか達成できない日に至っては、パフォーマンスはまあまあだが、達成しても最高の気分ではないかもしれませんね」 

 

また、監督も「目標は目に見える」というマネジメントサイエンスにある王道の考え方を強く信じています。アスリートたちは達成すべき目標の小分けとレース結果で目標の可視化を簡単に行い、レア監督自身もまた、自分に具体的な目標を課して可視化に努めているのです。 

 

「自分自身の目標はプロセスと結果の両方で設定します。例えば、今日は7人のアスリートと個別に話して、現状と今後を再確認するという目標を立てます。それがプロセスの目標であり、自分でコントロールできるものです。結果の目標の一つとしては、Onの ZAPアスリートを2人、オリンピック代表選考会で10位以内に入れるという目標があります」

 

では、レア監督も推薦する、常に目標に意識を向け続けるためにはどうしたら良いのでしょう。 「何度も確認することです。繰り返しはコーチング手法の中でも、口頭で行えるベストな方法です」

    

 

俯瞰して見続ける


レア監督と選手たちから教わる秘訣の数々から感じられるのは、アスリート的マインドセットにはある程度の許容力が必要だということです。つまり彼らは、目標を達成できない可能性を受け入れる準備ができているのです。目標に向かって頑張ることが、不健全な「固執」にならないようにして、どんな大きな目標でも、現実を受け入れようとしています。

 

アンドリュー・コリー選手はそれについて、こう話します。「2020年の目標は、米国のオリンピック代表選考会で優勝すること、健康体を保つこと、すべきことに集中できる環境を維持すること。そしてこれまでで一番のコンディションでオリンピック大会に出場して、世界中のトップ選手たちと競うことです」

 

コリー選手のこの目標を聞いて、明確さや野心がないとは誰も思わないはずです。それでは、最適な準備を行い、然るべきときに最高の実力を発揮する強靭な精神力を確保するために何をするのでしょうか? 

 

「自分を精神的な人間だと見なす傾向があるので、自分の精神面をアメとムチで鍛えるつもりですし、そうやってトップ選手の何人かを負かしたいと思います」とコリー選手。 毎日、その日をあるがままに受け入れ、何をするにもその瞬間にフォーカスするといいます。

 

だって、走るのが大好きですし、友だちと一緒に走ったり、必死にワークアウトをしたりするのは本当に楽しいですから。記憶をさかのぼって考えてみても、目標を立てると、その目標が自然に達成へと導いてくれると思いますね 

     

さらにコリー選手は、周りにいる人から得る影響の大切さにも触れています。大切なのは、自分が設定した目標に責任感を持たせてくれたり、目標達成までの過程をサポートしてくれたりする人が周りにいるかということです。これはOn ZAPチームの理念の核にもなっています。突き詰めれば、エリート選手たちがトレーニングのために、わざわざノースカロライナ州の森林に集ってくる理由はこれなのです。 

 

「目標の達成をサポートしてくれるチームとして、何年もかけて大きく成長したランニングファミリーがいるのは幸運なことです」(コリー選手)

 

「彼らは僕のことを信じてくれています。だからこそ、自分のファミリーの前で中途半端なことはできないと、よく自分に言い聞かせています」

アンドリュー・コリー選手お気に入りのシューズ:Cloudflow
流れるような走りができるようにしたいと常に思っていたので、 On にCloudflowというシューズがあると聞いたときにはすぐに夢中になりました。履いてみると、流れるような快適さに身も心も溶けました。
シューズを見る

【カギとなる6つのポイント】「アスリート的マインドセット」その1: 目標

 

1. 明確な目標を設定する

目標はアスリート的マインドセットの礎です。明確な目標を持つと、自分の時間を大切なことにフォーカスして使えるようになります。例えば明確なトレーニングプランを立てると、次のステップを考え直したり、十分にトレーニングしたかどうかと気を揉んだりして精神力を無駄に使わなくなります。アスリート的マインドを定義するのは、自分の設定した目標に忠実であるという自制心です。 

 

2. 大きな目標を小分けする

大きな目標を短時間で達成可能な目標に小分けすることで、最終目標の達成を促します。疲労や悪天候が大きな目標達成の意欲を削ぐときには、この方法がモチベーションの維持に役立ちます。

 

3. 目標に階層をつける

目標を達成できないこともあると認められる力は、アスリート的マインドセットの重要な要素。常に健全な精神でトレーニングに臨むように心がけます。大きい目標をA、B、Cにクラス分けするレア監督の戦略は非常に有効で、これが一生懸命努力した自分を自覚する証しとなります。実はここが本当の勝負所なのです。 

 

例としては、10㎞の普通のランニングをするとして、今日はあまり気分が乗らないので40分以内で完走すると決めます。45分かかったらBクラスで、それより長くかかったらCクラスと階層を分けます。こうすると10㎞走った記録は残ります。気乗りしないから「記録が出ないし、練習しても仕方ない」と、練習をサボる最悪の選択肢は避けられるわけです。 

 

4. 目標を達成しようと決めた理由を思い出す

これはレア監督の信念の中でも重要な信条です。「スポーツを始めた子どもの頃と同じくらい楽しみながら毎日トレーニングするようにと、私たちはトレーニング中の情熱、喜び、幸運の大切さをいつも選手に語っています」

 

5. 俯瞰で見続ける

目標を達成できないとき、目標を俯瞰して見ることや、本当に重要なものが何かを見極めることが精神面の強いサポートになります。自分の健康状態、家族、友だちなど、新しいPR活動よりも大切なことがたくさんあります。日記をつけて日々の進捗状況を記録しつつ、自分が感謝する人やものを思い起こします。こうすることで、パフォーマンスに悪影響を与える負のプレッシャーを緩和できます。 

 

6. 自分のチームを見つける

同じ目標を持った人々に囲まれると責任感を持ち続けることができ、彼らとの間に健全な競争心が生まれ、家でネットフリックスを見ているほうが現実のトレーニングより面白いと思っているときでも、彼らが外へ連れ出してくれます。そして、ランナーであっても関係者やサポーターであっても、自分に相応しい人々を周囲に置くと自分のやる気を維持でき、たとえ物事が計画通りに進まなかったり、困難に見舞われたりしても、常に彼らから必要なサポートを受けられます。落胆や困難は確実にやってきます。次の記事では「粘り強さ」について取り上げます。 

         

  

ここで答えてくれたマラソン選手とレア監督がOn ZAP Enduranceチームとして2020年東京オリンピックの米国代表選考会を目指すドキュメンタリー「Chasing Tokyo-東京オリンピックを追いかけて」をシリーズで公開しています。ぜひご覧ください。        

Onのニュースレターに登録して、あなたのランニングにもっとインスピレーションを!