全てのランナーにはそれぞれの走り方があります。また、そうあるべきだと私たちは考えています。Onの代表的技術CloudTec®は、どんな場所でもどんな走り方でも、あらゆる人にメリットをもたらすようスイスで開発されました。
このシステムによるアウトソールは、消費エネルギーを抑え、筋肉の活性化を抑えます。そうしてランニングの効率を上げることで、さらに速く、遠くへ走ることを可能にしています。
私たちのシューズは誰の走りも矯正しません。Onのルーツであるアルプスの山々のように、私たちは何事においてもできる限り「自然」であることを大切にしています。走りについてもそれは同じ。そのため、それぞれの走りを矯正することよりも、クッション性を重視しています。
Onのアウトソールは、不快なポジションや、けがの原因になるような動きで足を無理に着地させるのではなく、履く人それぞれに適応するように設計。あなた自身のランニングスタイルを快適なかたちで最大限に活かせるよう、サポートすることを目指しています。
CloudTec®とは?
(ほとんど)全てのOnシューズのアウトソールを見ると分かるように、CloudTec®は中が空洞になった小さなパーツが複数集まって構成されています。これらのパーツを私たちは「クラウド」と呼んでいます。このパーツは着地と同時に圧縮し、蹴り出しと同時に素早く広がります。クラウドはこの動きを個別に、しかし完全なユニットとして実行するように設計されています。
CloudTec®は着地の衝撃で生まれたエネルギーを利用し、前に進む推進力へと変換。シューズを履くと雲の上にいるような、弾む感覚を感じますが、それこそが当社独自のシステムの利点となる、エネルギーリターンです。同じスピードで走る際の筋肉の動きを従来よりも少なく抑えます。
垂直方向と水平方向へのクッションニング
Onのフットウェア&イノベーション部門で主任を務めるイルマリン・ハイツはこう話します。「CloudTec®は必要な時だけクッション性を発揮する、非常に適応力のあるシステムです。個別のクラウドパーツが卓越した快適性を提供します 。単一システムのアウトソールはですが、かかとの部分は厚く、前足部は薄くなっています。このようなタイプのものは他の単一システムには見られません。一般的にはかかとからつま先まで同じようにクッショニングを持たせる傾向があるからです」
「テレビをHDや4Kで見るようなものです。画素数が多いほど映像は鮮明になります。CloudTec®はそれと同じです。独立して個別に機能するクラウドをアウトソールに搭載したことで、異なる動きをするシステムを生み出すことに成功しました。そうして垂直方向と水平方向へのクッション性が実現されたのです」
どう役に立つのか?
ランニング中にするけがの多くは、着地で水平方向から受ける衝撃が原因です。ランニングでは前方に進む勢いが生まれますが、エネルギーを体に押し込めるような着地の仕方だと、その勢いを妨げてしまいけがの原因になってしまうことがあります。
ある研究によると、ブレーキ力が強いランナーは、それが低いランナーよりもけがをする可能性が8倍も高くなります。
100m走を考えてみてください。ほとんどの人は、全速力で走ろうとすると前かがみの姿勢になります。でも、ゴールをした途端に体を引き上げて、かかとを使って速度を落として止まります。こうすることで、ブレーキ力が増加します。
ランニングでこのような動きをしてしまうと、前進する勢いに大きな影響を及ぼします。これは、ハンドブレーキをかけたまま車を走らせるようなものです。でも私たちの多くは、ゆっくりと走っている時にも、うっかりこの動作をしてしまうことがあります。
Onのシューズは水平方向と垂直方向の衝撃を和らげるクッション性を持たせているため、このような動作によって発生する負担が軽減されるしくみになっています。
「CloudTec®は、水平方向と垂直方向へのクッション性に特化するよう設計された、唯一のシステムです。これは、ランナーをしっかりとサポートする仕組みです。足が地面に着くときの制動力と、着地した時に体に送り込まれる力の量を減らすからです。その代わりに、その力を前進する勢いに変えるクッショニングシステムを開発しました」
「足が着地するたびに、体中に振動が送られます。クラウドは水平方向に潰れることにより、これらの振動をより効果的に吸収できます。これは、全体的なエネルギー消費にプラスの効果をもたらし、けがの防止につながります」
どんなランナーでもスムーズに走れる
フットストライクは、最初に地面に接触する足の部位によって分類されます。ランナーには、ヒールストライカー、ミッドフットストライカー、またはフォアフットストライカーのタイプがあります(下の画像を参照)。どのように足が着地するかによって、快適さ、スピード、エネルギー消費、更にはけがにも影響を与える可能性があると言われています。そのため一部のランナーの間では注目されている話題です。
でも、私たちはむしろ、ランナー自身が自然に感じられる走り方で走ってほしいと思っています。CloudTec®は、ライド感(着地から蹴り出しまでの間にかかとからつま先へ足の重心が移行する時の感覚)によって健康的なローリング運動を促進し、あらゆるタイプのフットストライクで機能するように作られています。
Onのスポーツ科学専門家、ディナ・ワイズハイトはこう説明します。「スキーブーツを履いて走ることを想像してみてください。シューズが全く曲がらないため、そのライド感は酷いものです」
「私たちが目指すのは、着地の衝撃がけがの原因になったり、走る勢いを止める原因になったりしない、ライド感を改善するシューズです。CloudTec®では円形のローリング運動の実現に取り組みました」
「また、かかとから着地すればするほど、シューズ後部のクラウドパーツが着地と同じ方向に反応します」
「これは、体が感じているのと同じ方向の衝撃を和らげます。私たちのシューズは、それができるように設計されています。市場にある他のほとんどの製品では、1枚のフォームを使用しているだけなので、このようなことはできません」
このコンセプトをさらに発展させたのが、着地の際に体重の大部分がどこに分配されるのかというデータに基づいて、個別のクラウドを備え、クッション性を機能させるという方法です。
つまり、どういうことなのでしょうか。
着地で足が外側に倒れ込むスピネーション(回外、下の画像の左端)では、その部分のクラウドが最初に圧縮されます。しかし、内側に倒れ込むプロネーション(回内、下の画像の右端)の場合は、内側のクラウドが最初に潰れます。
これは、パフォーマンスと快適性を追求した適応型クッショニングなのです。
ミリメートル単位での調整
この独特な感覚を生み出すためには、繰り返しテストを行うことが必要です。個々のクラウドの厚さ・密度・高さ・位置は、アウトソールが1つのユニットとして機能する際に大きな影響を及ぼします。
クラウドはミリメートル単位で測定され、クラウド間のスペースも同様に測定されます。また、履く人の性別やシューズのサイズ、モデルが変わると機能しなくなることもよくあります。変化しやすい要素がたくさん関係するため、骨の折れるプロセスです。
「クラウドパーツの配列に工夫をしています。例えば、クッション性を高めるために、かかと部分には空洞のサイズが最も大きいクラウドパーツを使用しています。シューズの前方に向かって、クラウドはどんどん小さくなっていきます」
「空洞の形も重要となるため、クラウドパーツの反応を試すために、素材を追加したり省いたりします。アウトソールの全てのクラウドパーツにはそれぞれ果たすべき役割があり、私たちが期待する反応をするように構成します」
「全てのクラウドパーツが自由に動けることが非常に重要です。全方向への動きではありませんが、前後へ動き、場合によっては左右にも動きます」
「私たちのシューズには、さまざまな大きさのクラウドが搭載されているため、異なる感覚や結果をもたらします。そのため、原型を作る時は、特定の反応を引き出すために、すべてのクラウドのパフォーマンスを非常に注意深く調べます」
「全ては膨大な時間を費やした実験とテストから生み出されたものです。今のところ誰も私たちのまねをできないのは、おそらくそのせいでしょう」
CloudTec®の進化
10年以上前に開発をスタートして以来、さまざまな種類のランニング、ランナー、地表、天候に対応できるよう、数多くのCloudTec®が生み出されてきました。でも、目的はいつも同じ。履く人に最高のランニング体験をもたらすことなのです。