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On x MoMA PS1:Nova Class エピソード1 – エネルギーの返還

ニューヨークにあるMoMA PS1は1971年の設立以来、アート界の最新トレンドをリードする存在として、新進気鋭のアーティストたちに発表の場を提供してきました。今では、最も重要な非営利のアートセンターの1つとして広く知られています。OnはそんなMoMA PS1と提携し、ニューヨークの現代アーティストやクリエーターたちが人との接触が制限されていた数カ月を経て、どのように新たな力を見出しているのかを探ります。Nova Class エピソード1では、受け取ってきたエネルギーを人々に返そうとしている彼らのストーリーをお伝えします。

 

「何かを始めるということは、気が遠くなるほど大変なことです。自分をやみくもに信じてみるという感じです。ランニングやウォーキングに似ているし、あえて転んでみるような感じです」

 

エネルギー。それはどこにでもある、すべてを動かす存在。すべての人、すべての顔、すべての街、すべての通り。良いエネルギーもあれば、そうでないエネルギーもあります。私たちのやる気を起こさせるときもあれば、私たちを打ちのめして服従させるときもある。数値化することは不可能だし、偽ることも同じように難しい。でも、良い方向へ導くこと――これはできるはずです。

 

アーティストやクリエーターが集まるニューヨークのコミュニティーにとって、MoMA PS1はまさにそれができる場所です。エネルギーを何か新しいものや、実験的なものに注ぐことができる場所です。

 

世界が閉ざされている間、抑圧されたエネルギーはどんどん蓄積されてきました。その溜まったエネルギーは、解き放たれ、燃え上がるときを待っています。多くのアーティストにとっては、今が、内に溜まったエネルギーを還元するときです。

 

ジェレミー・トゥーサン・バティスト / Photo by: Alice Plati
アナ・ロクサーヌ / Photo by: Alice Plati

 

MoMA PS1の紹介

 

1976年、小学校として使われていた建物「Public School No.1」のホール内に、アートセンターPS1がオープンしました。その後、建物の頭文字はそのままに、名称が「Project Space1」に変わりました。当初の目的は、使われていなかったニューヨークの都市空間を、現代美術の展示スペースとして再利用することでした。PS1は新進気鋭のアーティストやアート界の最新トレンドに焦点を当て、音楽、演劇、映像作品など、様々な形態のアートが交わる場所として展開しています。

 

PS1は2001年にニューヨーク近代美術館(MoMAと合併し、大きなステップを踏み出しました。それに伴い、PS1の名称は現在のMoMA PS1に改名されました。MoMA PS1はこれまで、企画展、パフォーマンス、講演会など様々な形式で、新進気鋭のアーティストや知名度の低いアーティストに発表の機会を提供してきました。

 

MoMA PS1で作品を発表したアーティストやクリエーターの中に、ミュージシャンのアナ・ロクサーヌと、作曲家でパフォーマーのジェレミー・トゥーサン・バティストがいます。2人は、MoMA PS1のコンサートシリーズ「Warm Up」や様々な展示会でソウルフルなパフォーマンスを披露してきました。アナとジェレミーはこれまでどうやってコロナ禍を乗り越えてきたのでしょうか?ムーブメントやエネルギーは彼らの「歩み」にどのような影響を与えてきたのでしょうか?今回のNova Classでは、そうした点について2人に話を聞きました。

 

ジェレミー・トゥーサン・バティスト / Photo by: Alice Plati
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「自分の世界で良いものを見つけることが大事です…」

 

ジャズ音楽家、アナ・ロクサーヌのアンビエントなサウンドスケープには、聴き手を夢中にさせる力があります。創造性の新たな表現方法を模索していくには、まず心をまっさらな状態にすることが大事だとアナは考えます。「すべてを置いて、まっさらなスタートを切る。そうすることで、新しいことにチャレンジできます。今取り組んでいることも、そうやってスタートさせました」。唯一無二の世界観を持つビョークに影響を受けたというアナは、このようにして自分の成長に必要なものを見つけてきたようです。

 

パンデミックの影響で、活動の場が失われてしまったアーティストも多い中、アナは周囲の人の明るさや、自分が持つ前向きな気持ちを大事にしながら、力やインスピレーションを得てきました。クリエイティブなエネルギーが湧いてくるのを感じたら、自分のペースを保つことを何よりも心掛けています。時にはスローペースになることもありますが、それがかえって自分の芸術性を高めることになるとアナは言います。「物事には時間がかかるものだと思います。不必要に急ぐことは、体や健康、心に負担をかけることもあります」

 

アナにとってムーブメントとは安定であり、人生のゆっくりとした流れをただ受け入れることを意味します。自分の中に安定してエネルギーが流れるようにすることで、アナはエネルギーを取り戻してきました。そして今、音楽で人を元気づけようとしています。

 

 

「静止することは私にとって自然なことではありません」

 

ジェレミー・トゥーサン・バティストは音楽とアンビエントサウンド、そして実験的なサウンドデザインの境界を超えようとしているアーティストです。創作活動以外は、じっとしていることはないと言います。今まで世界各地を巡り、あれやこれやと素早く考えながら生活しているジェレミーにとって、「動くことは第2の天性」。特にニューヨークのような、慌ただしい街ではなおさら動きたくなるそうです。

 

アクティブな考え方を持つジェレミーですが、新しいプロジェクトや冒険を始めることの難しさは承知しています。「(何かを始めるということは)自分をやみくもに信じてみるという感じです」。創作活動中でも、パフォーマンス中でも、近所を走っているときでも、ジェレミーは「信じて、思い切ってやってみる」という考えを大事にしています。特別なものを生み出すためには、創造的自由を失うことなく、日々の小さなリスクをある程度コントロールする必要があると言います。

 

いつものようにインスピレーションを得ることができなくなったロックダウンの期間中、ジェレミーは少しペースを落として周囲にあるエネルギーを吸収することにしました。時には録音マイクを窓の外に出して、「いつも自分の音で埋めていた空間を、いつもそこにあったコミュニティーの音で埋めてみました」。コミュニティーから得ることができたのは、次のプロジェクトの素材だけではありません。外に出て周りを観察し、シンプルな喜びを味わう以外にすることがなかったとき、ジェレミーはコミュニティーから新たなエネルギーを受け取ってきました。

 

 

影響力のある数多くのアーティストがMoMA PS1とコラボしていますが、アナとジェレミーもこうしたアーティストたちと同様に、これまで受け取ってきたエネルギーを返す必要があると感じています。なぜなら、エネルギーを返すことで、アートをアイデアからクラフトワーク、つまり誰もに受け入れられ、誰もに恩恵をもたらすものへと変えられるからです。それは、歩みの1歩は動きの終わりに過ぎないけれど、次の1歩で新たな動きが始まることと同じです。エネルギーを受け取り、適切な方向に流し、還元する。そうやって2人は、内面のエネルギーを解き放とうとしています。

 

アナ・ロクサーヌ / Photo by: Alice Plati

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